Sep 1, 2013

アブドゥライ

アブドゥライは二十歳のMamou(首都コナクリから車で5時間)の田舎出身の男の子だ。先天的にメラニンが欠乏する遺伝子疾患をもつアルビノ(ス)として生まれてきた。事務所の前の道路で朝から晩まで電話のカードを売っているので、いつからか挨拶し、話をするようになった。一年ほど前に田舎に戻ってしまい、もう会えないかと思っていたが、最近また戻ってきて、再会を果たした。その際、事務所のガードマンが、「君のことを一番最初に聞いてきたよ!」と言ってきたときは、嬉しかった。

昨日いつものように事務所前に駐車すると、アブドゥライがいつものように「Cellcom(電話会社)のCinquante mille(5万ギニアフラン、約700円)あるよ!」と笑顔で話しかけてきた。しばらく話していると、彼の左足の甲に直径3cmくらいの、まだ新しい(乾燥しきってない)真っ赤な傷があるのが目に入った。聞くと、2日前、カードを売ろうと車に近づいたところ、車が停車しきれず、自分の足にのっかてきたとのこと。いつ見ても、通り過ぎる車に一生懸命商売しているので、いつか事故に遭わなければいいが、と危惧していたので、やっぱり、と思った。

私だったら大げさに包帯を巻いていそうなこの傷、まだ病院にも行っていないという。毎朝きれいな水で洗っているから大丈夫だ、と。でもこんな口がぱかっと開いた傷にゴムぞうりだと、ばい菌が入って化膿するかもしれないし、実際左足は赤く腫れ上がっている。病院に行ったほうがいい、とCinquante mille渡した。ひどい傷を負わされたにもかかわらず、それに対し怒りのひとつみせず、「仕方ない」と現状を受け入れる態度は、お金のないギニア人一般に見受けられる態度だが、なんともやりきれない気持ちになった。あの傷がひどくなって(大げさだが)例えば足を切断しなければならなくなったとしても、「仕方ないや」と受け入れるのだろう。

アブドゥライのように出稼ぎで働いている青少年は毎日道路脇に見る。アブドゥライ自身は、毎日朝7時から夕方6時まで太陽の下でカードを売り、一日、50万から70万フラン(7000ー10000円)のカードを売ったら、1万5千から2万フラン(200ー300円)の稼ぎがあるらしい。そのお金は田舎の実家に送っている。5年生の弟がいて、父親がもう年老いているため、自分がコナクリに働きに来た、と言う。彼は学校に行ったことがない。

彼らのような出稼ぎ者に限らず、ギニアには(そして世界中に)、病気になったり怪我をしても病院に行ったり薬を買うことのできない人が信じられないくらい沢山いる。すばやく治療できなかったため、命を失う人が、沢山いる。私たちの昼食代で払える病院や薬代、である。